東京高等裁判所 昭和62年(ネ)3480号 判決 1988年7月19日
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
第一 当事者の求めた裁判
一 控訴人
1 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。
2 被控訴人の控訴人に対する請求を棄却する。
3 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
二 被控訴人
主文同旨
第二 当事者の主張は左のとおり附加するほか、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する(ただし、原判決一四枚目裏七行目「右協同組合」を「本件共済組合」と改める。)。
(控訴人)
1 原判決一二枚目表末行「負担すべきであり」のあとに「右四者以外の控訴人大塚鉄工を含めた関係者の負担部分は存しない。仮にそうでないとしても右四者の」を加え同裏二行目「仮に」のあとに「右四者以外の」を加える。
2 労災保険にせよ、自賠責保険、任意保険、あるいは共済契約にしても、これらは、いずれも、保険契約者または共済契約者が強制的または任意に保険料や掛金を負担、出捐して、各種災害等の被害者に対する自己の賠償責任に備えているのであるから、その保険金や共済金の支払によって被害者に対する賠償がされた場合、被害者に対する賠償総額が単純に減少するということだけで、複数の賠償義務者相互間の求償関係において、それ以上当該保険契約者等に何らの考慮もされないということは相当でない。
右の点を考慮するならば、あるべき求償関係は、
(一) まず、被害者に生じた全損害について、賠償義務者各人の過失割合による具体的負担割合額を算定する。
(二) 保険金等による支払額は、右によって算定された当該保険契約者等の負担割合額に充当される。
(三) 保険金等が、当該保険契約者等の負担割合額を超過している場合には、その超過額は同人の「出捐」ではないので、他に求償することはできない。もっとも、右超過額は、現実に被害者に対する賠償金の支払に充てられたのであるから、他の賠償義務者の負担割合額を減額させる。
(四) 賠償義務者各人の保険金等による支払額は、各人の前記の負担割合額に充当されその残額が求償の対象となる。
(ただし、右求償関係についての主張は、控訴人の負担割合が、一〇パーセントの範囲にとどまる場合にのみ、予備的に主張するものである。)
(被控訴人)
控訴人の右2の主張を争う。
第三 証拠関係(省略)
理由
一 当裁判所は、被控訴人の控訴人に対する本訴請求は正当として認容すべきものであると判断するが、その理由は左のとおり附加、訂正するほか原判決理由説示と同一であるから、これを引用する。
なお、控訴人から求償関係につき当審において新たに主張するところがあるが、この主張は控訴人の負担割合が一〇パーセントの範囲にとどまる場合にのみ予備的にするものである旨控訴人の附陳するものであるところ、当裁判所は控訴人の賠償債務負担割合を三〇パーセントと認めるのを相当とし、その理由は原判決説示のとおりであるので、控訴人の右主張の判断には立ち入らない。
1 原判決一八枚目表五行目「成立に争いのない」のあとに「甲第二号証、」を加え、同七行目「弁論の全趣旨」を「原審証人杉岡正章の証言」と改め、同九行目「二、」のあとに「原審証人森本猛士の証言により原本の存在、成立ともに認められる」を加える。
2 同一九枚目表三行目「数社に下請けさせて」を「冨士産業外数社が順次下請けして」と改める。
3 同一九枚目表九行目「必要とし」から同裏一行目「原告は、」までを「必要としたので、被控訴人に対し、継続的に運転手付きで右工事用クレーン車の派遣を要請し、被控訴人はこれを承諾して、」と改め、同裏二行目末尾に「(右の関係は、運転手付きのクレーン車の賃貸借契約と解せられる。)」を加える。
4 同二〇枚目表四行目「運転者」を「運転手」、同二四枚目裏六行目「あるる」を「ある」とそれぞれ改める。
5 同二六枚目裏三行目「その負担部分につき」を「その負担部分を超えて出捐した分につき(負担金額を限度として)」と改める。
6 同二七枚目裏一〇行目「共済事業組合」を「共済協同組合」と改める。
7 同二八枚目裏八行目及び九行目「安島ないし中條、」を削り、同九行目及び同二九枚目表四行目「金沢」をいずれも「金澤」と改める。
二 よって、原判決は相当で、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。